痔は、家庭の医学書などを見ると、
①痔核(イボ痔)
②切れ痔(裂肛)
③肛門周囲膿瘍
④痔瘻(穴痔)
などと分類、解説されています。これらは肛門周囲の疾患ではありますが、原因も治し方も違いますので、まず該当する疾患を把握することが大切です。
実際は、これらの疾患を混同し、似たような治療や同じ薬剤を使用しているのが現状で、痔が治りにくい疾患となっている大きな理由です。
原因と対策をしっかり把握して実践すれば、痔は容易に完治できます。
③ 肛門周囲膿瘍
④ 痔瘻(穴痔)
肛門周囲膿瘍は肛門部の化膿の段階です。それが悪化したりして直腸と肛門部皮膚間にトンネル(瘻管)が出来、膿が溜まったり排膿したり、ずっとグジュグジュした状態が続くのが痔瘻(穴痔)です。
痔瘻(穴痔)は単純な化膿(③肛門周囲膿瘍など)から進行した重いものですが、原因・メカニズム、治し方は肛門周囲膿瘍、痔瘻(穴痔)ともに同じです。
肛門部は善玉、悪玉入り乱れた腸内細菌が沢山存在し、湿潤部のため皮膚常在菌も多数存在しています。
私たちの体はそのような環境下でも、そうした沢山の雑菌に対し、きちんと対処・処理するシステムを持ち、通常は殆ど化膿することはありません。
それが化膿してしまう=つまり化膿菌の内部への侵攻を防ぎきれず、雑菌に押されて排除しきれずに戦いが続く...
おわかりでしょうか?原因は『化膿菌・雑菌による』のですが、それを抑えきれない『防衛力の低下、免疫力の低下』 が最も問題なのです。
実際の治療は病巣部の処置(切開、排膿、抗生物質の外用・内用)ですが、これだけでは完治が難しく、再発を繰り返す方が多い理由です。
治療の要は、化膿菌・雑菌をきちんと排除し、患部をきちんと修理修復するための免疫力、自然治癒力をアップさせる事!これが最も大切なことです。
これは、さまざまな化膿性疾患と共通する大切なポイントになります。免疫力が強ければ化膿しません。
化膿菌・雑菌は私たちの体に常に存在しています。そのすべてを排除することは不可能です。
私たちにできることは、常に存在する細菌類に負けない、むしろそうした細菌類をしっかり抑制していける体の抵抗力、防衛力、免疫力をつけることです。
最も大切なのは、血液。PH7.4±0.05の弱アルカリ性の体液、血液を維持するための”食事”です。
ほんのわずかに酸性に傾いただけで、私たちの防衛因子の働きはガタ落ちしてしまうと言われています。
健全なアルカリ性血液維持には、酸性食品(リンの多い食品)を控え、アルカリ性食品(カルシウムの多い食品)を摂りましょう。
特に肉類、砂糖・砂糖の入った食品、加工食品、油脂類、酒類を極力減らしましょう。逆に海草類、穀物豆類、緑黄色野菜をできるだけ多く摂りましょう。
きれいなアルカリさらさら血液にしますと、私たちの防衛修理修復因子が活発に活動できるのです。
野菜嫌いな方や、多忙でなかなか思うように食事で摂れない方には、スピルリナや大麦若葉などのサプリメントが有効です。
さらに、こうしたきれいな血液を巡らすための軽い運動も大切です。
無理のないものから少しづつ!が大切です。
柔軟体操、体操、散歩で十分です。今よりも血の流れをより高める意識が大切です。
内服の抗生物質は病院でしか処方されません。外用剤はドラッグストアにもございます。抗生物質が複数配合された『ドルマイシン軟膏』などが、使いやすく無難です。
また店頭には太乙膏という漢方の外用薬があり、これは床ずれなどのひどい化膿性のものにもよく効きますので、びらん潰瘍など皮膚のひどい状態の時などにご相談ください。
内用の漢方薬は恵痔が一押しです。化膿性痔疾患という効能がきちんとあります。
あるいは化膿性疾患に幅広く用いられてきた真澄=十味敗毒湯
虚弱な方で、もっと体力をつける必要のある方には離雲=十全大補湯
腸が弱くて慢性下痢のあるような方には桂枝加芍薬湯
などがとても有効です。
判別しにくい場合には、店舗でご相談ください。
手術での切開はただ切って排膿するだけですし、瘻管の切除は大変で、なおかつ化膿するコンディションがゆえに、術後の治りが良くなく、肉がなかなか盛り上がってこないという人を多見します。
また単純な切開でかえって痔瘻(穴痔)になるなどと医学書にも記載があります。
上記治療のところをしっかり把握し、化膿しにくい体作りをして下さい。
手術を受けた方も同様、完治へと進む大切な知恵です。
この方法で治すと、根本的にこの疾患と縁がきれるだけでなく、他の様々な化膿性疾患にもなりにくい体質へと変わってゆきます。